この講義の前半では、次の定理の証明を目標とする。
から別の環
への準同型写像
が与えられたとする。
このとき、次が成り立つ。
の像
は
の部分環である。
の核
は
のイデアルである。
は
と同型である。
後半では、環や体の実例、とくに「一次元の環」 について詳しく扱う。
《環の定義・部分環の定義》
環とは、足し算、引き算と掛け算ができる集合のことである。
部分環とは、部分集合であって環になっているもののことである。
が環であるとは、足し算と呼ばれる写像
は足し算に関して可換群をなす。
の積は結合法則を満たす。
の足し算と掛け算は分配法則を満たす。すなわち、任意の
に対して、次のことが成り立つ。
は積に関して単位元を持つ。すなわち、ある
が存在して、
すべての
に対して、
かつ
が成り立つ。
の元は足し算、引き算がその中でできる」
という意味である。
野球の選手を集めて野球チームをつくるように、 数を集めて環を作ることができる。 環を扱う諸君はさながらチームの監督である。 「数」や「多項式」は歴史的な名プレーヤーである。 これらについては普通の和、積については結合法則や分配法則等が自動的に なりたっていることが多いのでそこはクドクド言う必要はない。
まずは「名門」チームの幾つかを知っておくべきであろう:
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に対して、次のことがなりたつ。
の和に関する単位元は、ただ一つである。
の積に関する単位元は、ただ一つである。
(2)
の単位元が(見掛け上)二つあったとして、それらを
とおくと
の和に関する単位元を 0 (時には
)と書き、
の零元
と呼ぶ。 また、環
の積に関する単位元を
(時には
)と書き、
単に 「
の単位元」と言ったときにはこの
のことをさす。
環の零元と、単位元は、野球の投手と捕手と言ったところか。
ときには、チームの中の一部分が、 「特別遠征チーム」として戦わねばならないときもある:
が単位元をもつ環であるとする。
の部分集合
が
の部分環であるとは、
が次の条件を満たす時にいう。
は
の足し算、かけ算を流用することにより環になっている。
は
の単位元を元として含む。
の部分環である。
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数や行列などの、見知ったもの(名選手)を集めた集合
を作ったとする。
それが環になるか否かの判定に重要なのは、
には必要なメンバーが揃っているか、ということである。
つまり
のなかの元を足したり、引いたり、掛けたりしたときに
のなかからはみ出す、ということがあってはならない。
そこだけ押さえれば
名選手たちなら最小限のことはしてくれる。
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の整数倍をすべて集めた集合