体論要約 No.5

今日のテーマ: \fbox{共役}

共役は昔は共軛と書いた。したがって、 この字は「きょうやく」と読むのが正しい。 このへんの事情については wikipedia の共役の項にも記述が見られる。 ネットも捨てたもんじゃない。

$K$ 上の代数的数 $\alpha$ を付け加えてできた体 $K(\alpha)$ の構造は、 実際には $\alpha$$K$ 上の最小多項式 $f_0$ によって完全に決まるのであった。

定義 5.1   体 $K$ の拡大体 $L$ から 体 $K$ の拡大体 $L'$ への写像 $\varphi$中への $K$-同型であるとは、 $\varphi$ が環準同型であって、 なおかつ $K$ 上で恒等写像に等しい時に言う。 言い換えると、$L$ から $L'$ の中への $K$-同型とは環の準同型であって、 同時に $K$-線形写像でも あるもののことである。 さらに、中への $K$-同型 $\varphi$ が全射であるとき、$\varphi$ を単に $K$-同型と呼ぶ(このとき $\varphi$ は必然的に全単射である) 。

命題 5.2   体 $K$ 上の拡大体 $L$ の元 $\alpha,\beta$ が、いずれも $K$ 上 代数的であるとき、 次のことは同値である。
  1. $\alpha,\beta$$K$ 上の最小多項式が等しい。
  2. $K(\alpha)$ から $K(\beta)$ への $K$-同型 $\varphi$ で、 $\varphi(\alpha)=\varphi(\beta)$ を満たすものが存在する。
  3. $K[X]$ の任意の元 $a,b$ に対して、

    % latex2html id marker 944
$\displaystyle a(\alpha)=b(\alpha)\quad {\Leftrightarrow}\quad a(\beta)=b(\beta)
$

定義 5.3   上の同値な条件のひとつ(ゆえに、全部)が成り立つとき、 $\alpha,\beta$$K$共役であるという。

問題 5.1   % latex2html id marker 960
$ \alpha=\sqrt{2}+3$ % latex2html id marker 962
$ \beta=-\sqrt{2}+3$ $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$ 上共役ではあるが、 $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$% latex2html id marker 967
$ (\sqrt{2})$ 上共役ではないことを示しなさい。 (本問では % latex2html id marker 969
$ \sqrt{2}$ が無理数であることは証明なしに用いて良いことにする。)

問題 5.2   体 $K$ の拡大体 $L$ と、$L$ の元 $\alpha_1,\alpha_2,\beta_1,\beta_2$ が 与えられているとする。 $\alpha_1$$\beta_1$ とが $K$ 上共役で、 $\alpha_2$$\beta_2$ とが $K$ 上共役ならば、 $\alpha_1+ \alpha_2 $ $\beta_1 +\beta_2$$K$ 上共役であると 必ず言えるだろうか?