微分積分学概論AI要約 No.12

\fbox{逆関数}

定義 12.1   実数のある区間 $I$ で定義された関数 $f$狭義単調増加関数であるとは、

$\displaystyle x_1,x_2\in I , x_1< x_2 \ \implies \ f(x_1)< f(x_2)
$

をみたすときにいう。 後半の $f(x_1)<f(x_2)$ % latex2html id marker 921
$ f(x_1)\leq f(x_2)$ に置き換えることにより、 (広義)単調増加関数が定義される。

たまに狭義単調増加の条件を 「 $f(x) < f(x+1)$」 と同じと勘違いしている学生を 見かける。数列の時の類推であろうが、これはもちろん間違い。 $x (\sin(2\pi x)+2)$ を考えてみれば良い。(ウラ面の図も参照)

定理 12.2   $f$ が閉区間 $[a,b]$ 上の狭義単調増加な連続関数であれば、

$\displaystyle f: [a,b] \to [f(a), f(b)]
$

の逆関数

$\displaystyle f^{-1}: [f(a),f(b)]\to [a,b]
$

が存在する。 さらに、この $f^{-1}$ は連続で、かつ狭義単調増加である。

12.3   正の整数 $n$ に対して、 0 以上の実数を定義域とする関数 $f:$$\mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 952
$ _{\geq 0}\ni x\mapsto x^n \in$   $\mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 954
$ _{\geq 0} $ は連続であり、狭義単調増加である。この関数は全射でもあるから、 $f$ は逆写像を持つ。この関数を

% latex2html id marker 958
$\displaystyle x \to \sqrt[n]{x}
$

と書く。 つまり % latex2html id marker 960
$ y=\sqrt[n]{x}$$y^n=x$ を満たす唯一の正の実数である。

命題 12.4   任意の正の実数 $x$ に対して、

% latex2html id marker 971
$\displaystyle \sqrt[n]{x^{k}}=
(\sqrt[n]{x})^k
$

がなりたつ。

Proof. % latex2html id marker 976
$ y=\sqrt[n]{x}$ とおくと、定義により、 $y^n=x$.

$\displaystyle (y^k)^n=y^{k n}=(y^n)^k=x^k.
$

ゆえに、$y^k$$n$ 乗して $x^k$ になる実数である。 そのような実数は唯一つ、すなわち % latex2html id marker 988
$ \sqrt[n]{x^k}$ しかないのであるから、 両者は等しい。 % latex2html id marker 973
$ \qedsymbol$

同様にして、次のことが分かる。

命題 12.5   正の整数 $a,b,c,d$$a/b=c/d$ を満たせば、任意の正の実数 $x$ にたいして、

% latex2html id marker 1001
$\displaystyle \sqrt[b]{x^a}
=\sqrt[d]{x^c}
$

がなりたつ。

この命題がなりたつので、 % latex2html id marker 1003
$ \sqrt[b]{x^a}$ のことを $x^{\frac{a}{b}}$ と 書いても誤解の恐れがない。

補題 12.6   $1$ より大きい実数 $x$ と有理数 % latex2html id marker 1016
$ q_1, q_2$ にたいして、

% latex2html id marker 1018
$\displaystyle q_1 <q_2 \implies x^{q_1} < x^{q_2}
$

が成り立つ。

問題 12.1   次のことを示しなさい。

% latex2html id marker 1025
$\displaystyle \forall \epsilon>0 \exists \delta>0; \forall q\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{Q}}$}$% latex2html id marker 1027
$\displaystyle (\vert q\vert<\delta \implies \vert 2^q-1\vert<\epsilon)
$

逆関数の別の例を挙げよう:

12.7   この例では、高校で習う三角関数の知識は 既知であるとする。
  1. $[-\frac{\pi}{2},\frac{\pi}{2}] \ni x\mapsto \sin(x) \in [-1,1]$ は狭義単調増加連続関数である。その逆関数のことを $\arcsin(x)$ と書く。
  2. $[0,\pi] \ni x\mapsto \cos(x) \in [-1,1]$ は狭義単調減少連続関数である。その逆関数のことを $\arccos(x)$ と書く。
  3. $(-\frac{\pi}{2},\frac{\pi}{2}) \ni x\mapsto \tan(x) \in$   $\mbox{${\mathbb{R}}$}$ は狭義単調増加連続関数である。その逆関数のことを $\arctan(x)$ と書く。

$\arcsin,\arccos,\arctan$ はそれぞれ $\sin^{-1},\cos^{-1}, \tan^{-1}$ などと書くこともある。



参考までに定義 12.1 の下の注意で述べた $x (\sin(2\pi x)+2)$ のグラフを 載せておこう。

\includegraphics[scale=0.5]{12-01.eps}