理工系線形代数学 No.11要約

今日のテーマ: 線形写像、線形変換

ベクトル空間 $V$ から ベクトル空間 $W$ への写像で、 和を和に、スカラー倍をスカラー倍に写すものを線形写像という。 ベクトル空間 $V$ からそれ自身への線形写像を線形変換という。

命題 11.1   ベクトル空間 $V$, $W$ の基底をとると、 $V$ から $W$ への線形写像は行列で書くことができる。 $V,W$ の次元をそれぞれ $n,m$ とすると、その行列は $M_{m,n}($$\mbox{${\mathbb{R}}$}$$)$ の元である。とくに、$V$ から $V$ への線形変換 は $M_{n}($$\mbox{${\mathbb{R}}$}$$)$ の元で表現できる。

定義 11.2   線形写像 $f:V \to W$ に対して、その核 $\operatorname{Ker}(f)$ と 像 $\operatorname{Image}(f)$

$\displaystyle \operatorname{Ker}(f)=\{ \mathbbm v \in V ; f(\mathbbm v )= \mathbf{0}\},
$

$\displaystyle \operatorname{Image}(f)=\{ f(\mathbbm w) ;\mathbbm w \in W\}.
$

で定義する。

行列の行基本操作を使うことにより、次のことがわかる。

命題 11.3 (次元定理)   $f:V \to W$ が有限次元ベクトル空間の間の線形写像なら、

$\displaystyle \dim \operatorname{Image}(f)=
\dim V-
\dim \operatorname{Ker}(f)
$

この量は $\operatorname{rank}A$ と等しい。

線形変換では、「変換後と変換前を比べる」ことができる。 とくに、対角行列による変換は考えやすい。

定義 11.4   $A=(a_{ij})$ が対角行列であるとは、対角成分以外の 成分が 0, すなわち

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$\displaystyle a_{ij}=0 \qquad( i\neq j$    のとき$\displaystyle )
$

が成り立つときにいう。

スペースの都合で、この「要約」では「対角行列 $D={\operatorname{diagonal}}(d_1,d_2,\dots,d_n)$」 という書き方をする。対角成分が $d_1,\dots, d_n$ であとは 0 であるような 行列という意味である。

対角行列同士の和や積は特別に易しい。 これは、対角行列 $D={\operatorname{diagonal}}(d_1,d_2,\dots,d_n)$ に対しては、基本ベクトル $\mathbbm e_1,\dots, \mathbbm e_n$

% latex2html id marker 885
$\displaystyle D \mathbbm e_1 = d_1 \mathbbm e_1,\qu...
..._3 \mathbbm e_3,\quad
\dots , \quad
D \mathbbm e_n = d_n \mathbbm e_n,\quad
$

を満たしているからである。

命題 11.5   対角行列 $A={\operatorname{diagonal}}(a_1,\dots, a_n),$ $B={\operatorname{diagonal}}(b_1,\dots, b_n)$ に対して、
  1. $A+B={\operatorname{diagonal}}((a_1+b_1),\dots, (a_n+b_n)).$
  2. $A-B={\operatorname{diagonal}}((a_1-b_1),\dots, (a_n-b_n)).$
  3. $c A={\operatorname{diagonal}}(c a_1,\dots, c a_n)$ $(c \in$   $\mbox{${\mathbb{R}}$}$$.)$
  4. $A B={\operatorname{diagonal}}( a_1 b_1,\dots, a_n b_n).$
つまり、対角行列の線形結合、積は成分ごとに行って良い。