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$n$ 角形と $1$$n$ 乗根

二乗して $-1$ になる数として, 虚数単位 $i$ をご存知の方も 多いでしょうが, 4乗して $-1$ になる数については, 初級段階で触れられることが少ないので, ここでちょっとだけ述べてみることにします.

\begin{displaymath}X^4+1=0
\end{displaymath}

を解けばよいのです. これを

\begin{displaymath}X^4+1=(X^2+1)^2-2X^2=(X^2+\sqrt{2}X+1)(X^2-\sqrt{2}X+1)
\end{displaymath}

と因数分解してみると, 後は二次方程式を解くことに帰着されて,

\begin{displaymath}X=\frac{\pm \sqrt{2}\pm \sqrt{2}i }{2}\quad(\text{複号任意})
\end{displaymath}

という具合になります. つまり, 4乗して$-1$ になる数は存在します. (4つもあります) これらは, 4乗して$1$ になる数と併せて正8角形の頂点をつくります.

一般に $n$ 乗して $1$ になる数は $n$ 個あり, それらを順に結ぶと単位円に内接する正 $n$ 角形ができます. $n=17$ の場合には,

\begin{displaymath}X^{17}-1=0
\end{displaymath}

の根全体が, 正 $17$ 角形を作るわけです. この方程式の根のうち, $1$ は自明ですから, それを省きましょう.


\begin{displaymath}f(X)=\frac{X^{17}-1}{X-1}
=X^{16}+X^{15}+X^{14}+X^{13}+X^{12}...
...1}+X^{10}+X^{9}+
X^{8}+X^{7}+X^{6}+X^{5}+X^{4}+X^{3}+X^{2}+X+1
\end{displaymath}

$ f(X)=0$ の根は

\begin{displaymath}\zeta,\zeta^2,\zeta^3,\zeta^4,\zeta^5,\zeta^6,\zeta^7,\zeta^8...
...ta^{11},\zeta^{12},\zeta^{13},\zeta^{14},\zeta^{15},\zeta^{16}
\end{displaymath}

です. ただし, ここで

\begin{displaymath}\zeta=\cos(\frac{2\pi}{17})+i\sin(\frac{2\pi}{17})
\quad (\fallingdotseq0.9324722294 + 0.3612416661 i)
\end{displaymath}

です. ガウスは三角関数をよく知っていたはずですし, 「喋れるようになる前から計算していた」と自ら語るだけの計算達者ですから, これらの値を手早く計算できたに違いないのですが, それで終らせはしませんでした. かれは 19歳のとき, $ f(X)=0$ を代数的に解くことができることを発見したのです. それは上記の数値を求めたり, 正17角形の作図法をあたえる, ということが 面白かったということもまあ多少はあったのでしょうが, 我々があとからいろいろなことを知った後でみてみると, 彼はむしろ方程式(とその根)の構造そのものの美しさをみて喜んだとみるほうが 妥当だと思われます.

上の16次方程式 $ f(X)=0$ の根は整数から始まって, 足し算, 引き算, かけ算, 平方根 を用いて書くことができます. この仕組みを理解し, 美しさを味わうのが 本文の目標です.




2002-08-15