next up previous
Next: この節のまとめ Up: 対数関数の多価性について Previous: 対数関数を一価関数にしてみる。

偏角を選ぶことの面倒な点

前節や前々節のように、 複素数の偏角を $[0,2\pi)$ (あるいは、 $[-\pi/2,3\pi/2)$ など) の範囲に決め打ちれば、関数 $\log$ を一価にすることが出来、 $x^x$ の分枝をたくさん考える繁雑さを なくすことが出来るなど、良いことも沢山ある。

しかし、数学の問題はそれで解決するものばかりではない。 実際、対数の満たすべき大事な法則

\begin{displaymath}\log(z)+\log(w)=\log(zw)
\end{displaymath}

$\log$ $\operatorname{Log}$ に変えると無条件には成り立たないことがわかる。 (例えば、

\begin{displaymath}2\pi i=\operatorname{Log}(e^{\pi i})+\operatorname{Log}(e^{\pi i}) \neq \operatorname{Log}(e^{2\pi i})=1
\end{displaymath}

である。)

もっと初心に戻って、 $\operatorname{Log}$ が対数関数の逆関数で あるかどうか調べてみると、

\begin{displaymath}e^{\operatorname{Log}(z)}=z \quad \text {$z\neq 0$ のとき})
\end{displaymath}

は確かに正しいのだが、

\begin{displaymath}\operatorname{Log}(e^z)=z
\end{displaymath}

は成り立たない。(例えば $z=2\pi i$ のとき)

このような不便さは、$\log$$2\pi i$ の整数倍の分だけ 不定性を持っていることに起因している。 読者の方の中には、それさえ思い出せば簡単に処理することができると考えられた 方もいらっしゃるだろう。 しかし、こういう基本的なところでさえ $\log$ まで戻っているようでは、 とても $\operatorname{Log}$ だけでは話が済んでいるとは言えないと考えることも出来る。



Yoshifumi Tsuchimoto
2000-04-12