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三角関数とその一次結合の満たす微分方程式

前節に述べたように、 $f(x)=\sin(x)$

\begin{displaymath}(f(x))''=-f(x)
\end{displaymath}

を満たします。しかし、これは微分を二回も行っているので、 先程の指数関数の微分方程式に比べて、やや複雑です。 このような状況を解決するのに、便利な方法があります。

\begin{displaymath}% latex2html id marker 2719
D^2f(x)=-f(x) \quad \therefore (D^2+1)f(x)=0
\end{displaymath}

とやってから、やおら $D^2+1=(D-i)(D+i)$ と因数分解し、

\begin{displaymath}% latex2html id marker 2723
(D-i)(D+i)f(x)=0 \quad \therefore (D-i)(f'(x)+if(x))=0
\end{displaymath}

とやるのです。 $f(x)=\sin(x),f'(x)=\cos(x)$ でしたから、

\begin{displaymath}% latex2html id marker 2727
(D-i)(\cos(x)+i\sin(x))=0 \quad \therefore
(\cos(x)+i\sin(x))'=i(\cos(x)+i\sin(x))
\end{displaymath}

ということになります。 まとめますと、 $g(x)=\cos(x)+i\sin(x) $ という関数を考えると、 $g'(x)=ig(x)$ を満たす。 ということになります。ちょっと注意してやれば、 $e^{\alpha x}$の時と同様の議論をつかうことにより、 $\cos(x)=i\sin(x)$

\begin{displaymath}\left\{
\begin{aligned}
g'(x)&=i g(x) \\
g(0)&=1\\
\end{aligned}\right .
\end{displaymath}

を満たす唯一の関数だということも示すことができます。

(この節の内容のうち、$D$ を使う部分は、 「本当にこんなことやって良いの?」という声が上がりそうですが、 大丈夫。注意さえすれば十分正しい議論として通用します。このようなやりかたは、 《演算子法》あるいは《作用素の代数の理論》として知られているものです。)



Yoshifumi Tsuchimoto
2000-04-12