next up previous
: 余談:Fubini-Study 計量の形式的な導き方について : 複素射影空間 : 複素射影空間のケーラー構造

Fubini-Study 計量の幾何学的な定義

この節では、Fubini-Study 計量の幾何学的な定義について 振り返ってみよう。 次のように、 $ \mathbb{P}^n({\Bbb C})$$ S^{2n+1}$ の商空間と見倣せる。

$\displaystyle \mathbb{P}^n({\Bbb C})$ $\displaystyle =({\Bbb C}^{n+1}\setminus\{0\})/{\Bbb C}^\times$    
  $\displaystyle =\{ v\in {\Bbb C}^{n+1}; \vert\vert v\vert\vert=1\}/S^1$    
  $\displaystyle =S^{2n+1}/S^1$    

$ S^{2n+1}$ には $ {\Bbb C}^{n+1}$ から誘導された計量が入り、 それは $ S^1$ の作用で不変だから、 $ \mathbb{P}^n({\Bbb C})$ の計量を定める。 これが $ \mathbb{P}^n({\Bbb C})$ の Fubini-Study 計量である。

本稿では余り用いないが、Fubini-Study 計量の座標表示についても 一応触れておこう。 $ \mathbb{P}^n({\Bbb C})$ の複素斉次座標 $ z_0,z_1,\dots,z_n$ をとる。 $ {\Bbb C}^{n+1}$ の各点の接ベクトルを $ {\Bbb C}^{n+1}$ の元と同一視しておく。 $ v\in T_p({\Bbb C}^{n+1})$ の長さは、

であたえられる。 $ S^{2n+1}$ の計量を求めよう。$ S^{2n+1}$ の点 $ p$ における $ {\Bbb C}^{n+1}$ の接ベクトル $ v$ を考える。 $ v$$ S^{2n+1}$ に関する接平面の成分と法線方向の成分に分解し、 接平面成分の長さを求めることが必要になる。

$ v$$ p$ とのなす角を $ \theta$ とおくと、内積に関する有名な公式

今の場合 $||p||=1$ だから$\displaystyle =\vert\vert v\vert\vert\cos\theta)
$

により、接成分の長さの二乗は、

$\displaystyle (\vert\vert v\vert\vert\cdot \vert\sin\theta\vert)^2= \vert\vert ...
...ert^2 (1-\cos^2\theta)
=\vert\vert v\vert\vert^2 -( \Re \langle v,p \rangle)^2
$

と求めることができる。これが $ S^{2n+1}$ の計量になる。 $ \mathbb{P}^n({\Bbb C})$ の計量を得るためには、 ここからさらに $ S^1$-作用の方向の成分を引き去る必要がある。 上と同様の考え方によって、

   ($v$ の、$S^n+1$ に接し、$S^1$ 軌道 と垂直な成分の長さ)$\displaystyle ^2
=\vert\vert v\vert\vert^2 -\vert \langle v,p \rangle\vert^2
$

と結論することができる。これが Fubini-Study 計量を与える基本である。

座標を使って表現すると、Fubini-Study 計量を与える(もととなる) $ S^{2n+1}$ 上の計量は、

$\displaystyle \sum_i d z^i \overline{d z^i} -
(\sum_i z^i \overline{dz^i}) (\sum_j \overline{z^j} dz^j)
$

と言うことになる。

話を $ \mathbb{P}^n$ らしくするために、$ \vert\vert p\vert\vert=1$ への制限を やめて、長さ $ \vert\vert p\vert\vert$ に関して斉次な形で書くと、次のようになる。

$\displaystyle \frac{1}{(\sum z^i\overline{z^i})^2}
\left(
(\sum_{ij} z^i \overl...
...ne{d z^j}) -
(\sum_i z^i \overline{dz^i}) (\sum_j \overline{z^j} dz^j)
\right)
$

これが斉次座標で表現した Fubini-Study 計量であって、 非斉次座標に移るには定石通り一つの $ i$ に関して $ z_i=1,dz_i=0$ とおいてやれば良い。 詳細は読者にお任せしよう。



平成16年8月24日