上の半単純 Lie 環 を考えよう。 普遍包絡環 が定義される。この環に対して 我々の議論を適用したい。
まず はカルタン行列による表示をもつ。
そこで、 の生成元としてこの を採用し、
以下の所論には のもう少し詳しい情報が必要である。
これらのデータを標数 の世界に落とそう。 からはじめたわけだから落とした体としては で十分であるわけだが、フロベニウス写像の作用を詳細に見るために ここでは標数 の体 を考えて、 について考察する。
標数 の世界では、restricted Lie 環の概念が存在する[3]。 正標数の半単純 Lie 環は restricted Lie 環の代表例である。 Lie 環の一般論をここで繰り広げるわけにはいかぬだろうから、 無理矢理に次のようにまとめておこう。
今の場合、 が の構造定数(や分母に現れる数) よりも十分大きいという仮定のもとで、
(*) |
注意
普遍包絡環にはもっとたくさん中心元がある。casimir 作用素はその 代表的なものであるし、一般的に、標数 0 の半単純リー環 の ランク(Cartan sub algebra の次数)を とすると、 の普遍包絡環の中心 は 変数の多項式環である。 (記号 は[2] の 23.3 の証明のところのものと 同一である。そこの所論と、Coxeter 群の一般論を用いれば が 多項式環であることがわかる。) したがって、 の元を modulo に落としたものが のほうにも出てくることになる。
Poincare-Birkoff-Witt の定理により、(*)の元は 上独立である。 したがって、(*)で生成される可換環
は生成元の取り方に依存していそうに見えるが実はそうではない。 このことを見るために、 から への 写像 を
は の像で生成される 可換環である。上記 Poincare-Birkoff-Witt の定理による議論は、 が単射であることを示している。 とくに、 は のベクトル空間としての双対空間 (を Frobenius 写像によってひねったもの)と標準的に同型である。
はその上の -coherent な algebra sheaf であって、 -加群としては locally free である。 標準ファイバーは [3] で「 の u-algebra」と呼ばれているもの になる。
こうして、 には が対応するという、 表面上は至極当然な結論にたどり着く。 ただし、上述のalgebra sheaf の存在など、 面白い構造が更につけ加わっているとことが興味深い。
後記: この小節の内容はオリジナルではあるが、実は math.RT/0401002 などに同様の記述があることがあとでわかった。 (京大の望月拓郎先生の御指摘による。)
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