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: リー環の普遍包絡環 : : Weyl 環の localization をとると


Cuntz $ O_2$

うまくいかない例も挙げておこう。Cunts 環 $ O_2$ (のホネ)は、次のように 定義されるような代数である。

$\displaystyle O_2=\langle e_1, e_2 ,e_1^*,e_2^*; e_1^* e_1=1, e_2^* e_2=1,
e_1 e_1^* + e_2 e_2^*=1, e_2^* e_1=0,
e_1^* e_2=0 ,
\rangle
$

(実際に巷で普通に定義されている $ O_2$$ C^*$-代数であって、上の「ホネ」 の $ C^*$-completion をとったものである。ただし、Cuntz 自身 $ C^*$ 代数 としてだけではなくただの代数としても(つまり上の「ホネ」も) $ O_2$ は 興味深いと述べているので、ここではこれを $ O_2$ と書くことにしよう。)

$ O_2$ の有限次元表現では、(標数の如何にかかわらず) $ e_1,e_2$ はともに 可逆で、したがって $ 1=e_1 e_1^* e_2 e_2^*=2$ となる。これは矛盾だから、 $ O_2$ には(標数の如何にかかわらず)有限次元表現は存在しない。

$ O_2$ だけでなく、一般に、 $ O_3,O_4,\dots, O_n, \dots$ および $ O_\infty$ が定義される。($ O_\infty$ は無限生成の環なので、少し別格とも言えるが) いずれの環でも、正標数に一度戻るアプローチはあまり有効でない。

Cunts 環は、KK-理論と呼ばれる二変数(bivariant) $ K$-理論の構成に 有用な環 [1]なので、 このことは少し残念ではあるが、Weyl 環と Cuntz 環の性格の違いを考えると やむを得ないとも言える。私見によれば両者は実多様体とカントール集合位に 違っている。


平成17年5月17日