next up previous
: この文書について... : 行列の計算のテクニック : 0 で割る時

逆行列を求める時の注意

逆行列を求める方法も複数あって、どれでも好きなものを適宜使えばよいのであるが、 一つのやり方は次のようなものである。

行列 $ A$ に列基本変形のみを行って、単位行列 $ E$ をつくる。 このとき、単位行列 $ E$ にも全く同じ列基本変形を行うと、得た行列 $ P$ は 実は $ A$ の逆行列である。

列基本変形とは、基本行列 $ P_1,\dots,P_k$ を右から

$\displaystyle A P_1 P_2 \dots P_k
$

と掛けて行くことに相当し、その見方で言えば、上の $ P$ $ P_1P_2\dots P_k$ なる積に相当する。 つまり、

\fbox{
$ AP=E$\ ならば、 $P$\ は $A$\ の逆行列である。
}

と言っているのであって、もちろんこれは正しい。

もちろん、行基本変形のみを行う方法もあって、これは、

\fbox{
$ QA=E$\ ならば、 $Q$\ は $A$\ の逆行列である。
}

という事実を使うことになる。

ところが、諸君の中には、行変形、列変形両方マゼコゼにして使う人がいて、 じつはこれでは逆行列を求めることができないのである。 上の説明で言えば、

(間違い)     $ QAP=E$ ならば、 $ QP$$ A$ の逆行列である。

ということが成り立てばよいのだが、これはうそである。 試しに自分で確認してみることをお勧めする。

混ぜるな危険。



平成15年1月30日