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実数の集合の例、上限、上界

定義 1.3 (``1.1.3'')   実数 $ a,b$ について、閉区間 $ [a,b]$ と開区間 $ (a,b)$ を つぎの式で定める。

$\displaystyle [a,b]$ $\displaystyle =\{x \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1048
$\displaystyle \vert a\leq x \leq b\}$    
$\displaystyle (a,b)$ $\displaystyle =\{x \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle \vert a < x < b\}$    

$ [a,b]$ には端点があって、そこでのようすは $ [a,b]$ のほかの点の ようすと大きく異っている。それに対して、$ (a,b)$ の各点はどの点も似ている。

定義 1.4 (``1.1.2'')   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ の部分集合 $ A$ が与えられているとする。 このとき
  1. $ a\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ A$上界 (upper bound)であるとは、

    % latex2html id marker 1074
$\displaystyle \forall x\in A (x\leq a)
$

    (つまり、どの $ x\in A$ をもってきても % latex2html id marker 1078
$ x\leq a$ ) が成り立つときに言う。
  2. $ a\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ A$上限(supremum)であるとは、 $ A$ の上界のうち最小のものをいう。

◎ 集合の上界は存在するとは限らない。 また、上界が存在したとすると、それはいくつもある。

例 1.5   $ T=\{$土佐電鉄の運賃$ \}=\{100,180,190,260,340,380,400,440,470,500\}$ とおく。このとき、
  1. $ T$ の上界としては、$ 1000$ がある。これは 「土佐電鉄に乗るときは1000円あればお金が足りないことはない」ことを 意味している。
  2. $ T$ の上界としては、他にも 500, 一万、十万、$ 951.777..$ 等がある。
  3. $ T$ の上限は $ 500$ である。

例 1.6 (最大値を持たないが上限を持つ集合たち)  
  1. $ \{\frac{n-1}{n}; n=1,2,3,\dots\}$ は上限 $ 1$ をもつ。
  2. $ \{x\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ; x<2\}$ は上限 $ 2$ を持つ。
  3. $ \{x\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ ; x^2<2\}$ は上限 % latex2html id marker 1126
$ \sqrt{2}$ を持つ。

定義 1.7 (``1.1.2'')   集合 $ A\subset$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$上に有界であるとは、 $ A$ が上界を少なくとも一つもつときに言う。

次の定理は実数の基本的な性質である。次回以降詳しく解説する。

定理 1.8 (``定理1.1'')   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ の部分集合 $ A$ で、上に有界なものは、必ず上限を唯一つもつ。

例題 1.9  

$\displaystyle S=\{ x\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle ; x^3-25 x <0\}
$

は上界をもつだろうか、 もつ場合には上界を一つ挙げてその理由を説明し、 もたない場合にはもたないことの理由を説明せよ。

(解答)

$\displaystyle S=(-\infty,-5) \cup (0,5)
$

である。 したがって、 $ S$ は上界 $ 10$ をもち、上に有界である。

上界は一つ挙げれば十分である。上の例題なら $ 5$ (上限) でも良いし、 $ 100$ でもよい。下の「問題」のように $ S$ が具体的に分かりにくい場合には、 つぎのような別解が参考になる。

(別解) まず、$ M=100$ とおくと、$ S$ の元 $ s$% latex2html id marker 1174
$ s\leq M$ を満たす。 なぜなら、もし $ s>M$ なる $ s\in S$ が存在したとすると、

$\displaystyle s^3-25 s = s^2 \cdot s -25 s >10000 \cdot s -25 \cdot s =9975 s >0
$

となって、これは $ s\in S$ に反する。

したがって、$ S$ のどの元も、$ M$ 以下である。 すなわち、$ M$$ S$ の上界の一つである。

旅行に行くとき、かかる旅費をキッチリ計算して、その分のお金しか 持って行かない人は少なかろう。「大体△万円あれば十分」とか 見積もる。これが上界の考え方。

問題 1.1  

$\displaystyle S=\{ x\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle ; x^4-2 x^3+3 x^2+4 x -5<0\}
$

は上界をもつだろうか、 もつ場合には上界を一つ挙げてその理由を説明し、 もたない場合にはもたないことの理由を説明せよ。


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2009-04-06