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正の数の無理数乗その1(チャチャ編)

実は、「指数法則」をみたしつつ、「巾指数」について連続ではないような「疑似指数」 を定義することも可能だ。

すこし良く知っている人のためにこの小節で そのことについて付け加えておこう。 この小節の内容は以下では使われないので、 特に興味のない人は飛ばしてください。

上に述べたような「疑似指数」 は例えば以下の手順で作ることができる。

1.
$\mbox{${\Bbb Q}$ }$-ベクトル空間としての $\mbox{${\Bbb R}$ }$ の基底 $\{r_\lambda\}_{\lambda\in \Lambda}$ をとって、

\begin{displaymath}\mbox{${\Bbb R}$}=\oplus_{\lambda\in \Lambda} \mbox{${\Bbb Q}$}r_\lambda
\end{displaymath}

と直和分解する。
2.
上の直和分解の直和因子のぶんだけの正の実数の族 $\{c_\lambda\}$ を 選んでおく。
3.
実数 $r$ をこの直和分解によって $r=\sum_i q_i r_i$ と書く。
4.

\begin{displaymath}a^{(r)}=(\text{$a$ の疑似 $r$ 乗})=\prod {c_i}a^{q_i}
\end{displaymath}

と定義する。
$a^{(r)}$ は次のような「指数法則」を満足することがわかる。

\begin{displaymath}a^{(r+s)}=a^{(r)}a^{(s)},\quad (ab)^{(r)}=a^{(r)}b^{(r)} \qua...
...\mbox{${\Bbb R}$}_{>0},\quad \forall r,s\in \mbox{${\Bbb R}$})
\end{displaymath}

$\mbox{${\Bbb R}$ }$ の直和分解と $\{c_\lambda\}_\lambda$ の選びかたをもう少しだけ工夫すれば、

\begin{displaymath}a^{(q)}=a^q (\forall q\in \mbox{${\Bbb Q}$})
\end{displaymath}

も成り立つようにできる。



Yoshifumi Tsuchimoto
2000-04-12