next up previous
Next: 指数や対数の値を比較するには Up: 指数関数を簡単な場合からコツコツと定義していく Previous: 正の数の無理数乗その1(チャチャ編)

正の数の無理数乗(正調編)

マニアックには前節のような話があるにしても、 普通は指数関数と言えば連続になるように 定義するのが歴史的にも正統だし、考えとして自然でもあるだろう。 (最近流行りのフラクタル理論などでは、そうともいえないかもしれないが、 悪の私としてはそこら辺は口をつぐんでおくことにする。)

つまり、「$e^b$ は、$b$ に近い有理数 $q$ をとって、 $e^q$ を計算したものの、 $q\to b$ のときの極限」、記号で書けば

\begin{displaymath}e^b=\lim_
{
\begin{subarray}{}
q \to b\\
q \text{は有理数}
\end{subarray} }
e^q
\end{displaymath}

と言う風に定義するのだ。 $0/0$$0^0$ の例を思い起こせば、 こういう風に極限で値を定義するときには、注意が必要なことがわかる。 つまり、

(★) 「$q$ が十分 $b$ に近づくとき、その近付き方に関係なく $e^q$ はある一定の値に近付く。」

ということを確かめなければならない。これも詳細は皆さんにお任せしよう。 (次の節も参照して欲しい。)

(★)のような議論を効率良くやるための道具が、よく 《 $\epsilon-\delta$ 論法》 とか呼ばれるもので、大学初年級の学生にとって難関の一つになっている。 でも、これをやっておけば前節のような混乱を避けることができる、 と思えば、便利なものだと言えるのではないだろうか。



Yoshifumi Tsuchimoto
2000-04-12