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正標数のWeyl 環の自己準同型

標数 $ p>0$ の体 $ k$ を考える。 簡単のため、$ k$ は完全体であると仮定しよう。 Weyl 環の$ k$-代数としての自己準同型があると、 それは中心 $ Z_n(k)$$ k$-代数自己準同型を定める。 (このことは自明ではない。 詳しくは [6]に 書いたのでそちらを御参照頂きたい。) さらに、$ Z_n(k)$ の「$ p$-乗根」を

$\displaystyle S_n(k)=k[T_1,T_2,\dots,T_n,U_1,U_2,\dots,U_n] \qquad
T_i=(\xi_i^p)^{1/p}
,U_j=(\eta_j^p)^{1/p}
$

とすると、$ S_n(k)$ 上の $ n$-次元(自明)ベクトル束の接続 $ \nabla$$ A_n(k)$ から定めることが できる。 次の命題が成り立つ。

PROPOSITION 4.2   [7] $ k$ は標数 $ p>0$ の体であるとする。 $ \phi:A_n\to A_n$ なる $ k$-代数準同型が与えられているとする。 $ f: \Spec S_n \to \Spec S_n$$ \phi$ に付随して決まる morphism とする。 $ G$ で「ゲージ変換」をあらわすと、 つぎのような等式が成り立つ。

(4.1) $\displaystyle G (f^*\nabla) G^{-1}=\nabla+\omega$

ここに、 $ \omega=\sum_{i=1}^n(\omega_{T_i} d T_i+\omega_{U_i} d U_i)$ はつぎの微分方程式の一意的な解である。

\begin{equation*}\left. \begin{aligned}&\omega_{T_i}^p +(\partial/\partial T_i)^...
...}} {\partial U_i})=0 \end{aligned} \right\} \quad (i=1,2,\dots,n)\end{equation*}

where $ \overline {T_i}=\hat{\psi}(T_i)=f^*(T_i)$, $ \overline {U_i}=\hat{\psi}(U_i)=f^*(U_i)$

上の命題で、 $ \omega_{T_i}$ $ \omega_{U_i}$ となっているのは 「$ \omega$$ T_i$$ U_i$ の偏微分」と言う意味ではない。 単に、$ 1$-形式 $ \omega$ の成分を区別するための suffix である。 物理では時おり見掛けるが、すこしよくない記号だったかも知れない。 (かと言って他によい記号法は見当たらないようにも思える。)

上の命題の微分方程式が面白い微分方程式で、これは例えば $ p=3,n=1$

$\displaystyle \xi_1\mapsto \xi_1 \eta_1 \xi_1 , \eta_1 \mapsto \eta_1 \xi_1 \eta_1
$

で定まる $ \phi$ についても使える。 実はこの $ \phi$ に対する $ f$ は etale ではなく、上の微分方程式を得る前には このような例がどのぐらいあるのかわからなかった。

微分方程式が得られたあとでは、次数の関係を吟味することにより、 $ \phi$ の(多項式としての)次数が $ p$ より十分小さければ、$ f$ は etale で、 なおかつ 接続 $ \nabla$ は保存される。 すなわち、Weyl 環にたいして $ \nabla$ を対応させるやり方は、$ p>>0$ なら 「標準的」であると言ってよい。 この 接続 の曲率は

$\displaystyle d T_1 \wedge d U_1
+d T_2 \wedge d U_2 +\dots
+ d T_n \wedge d U_n
$

である。



平成17年5月17日