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代数学 II 要約 No.4

今日のテーマ:

\fbox{イデアルの扱い方・グレブナ基底}

ここではイデアルの扱いについて補足しておくことにする。

まずは前回やり残した補題から。

補題 4.1  
1.
$k[X_1,\dots,X_n]$ の任意のイデアル $I$ について、 $I(V(I))\supset I$ が成り立つ。
2.
$k^n$ の任意の部分集合 $S$ にたいして、 $V(I(S))\supset S$が成り立つ。
3.
$k^n$ の任意の代数的集合 $V$ にたいして、 $V(I(V))=V$ がなりたつ。

基礎知識: $I$ は 環 $R$ のイデアルである、と言われたら、 $I$ のなかでは加減算と、 $R$ による作用について 閉じていることが保証されている。

逆に、 $I$$R$ のイデアルであることを示せ、と言われたら、 $I$ のなかでは加減算と、 $R$ による作用について 閉じていることを証明してやればよいわけである。

イデアルが等しいことを示すための常套手段。

$\langle a,b,c,\dots\rangle_{\text{ideal}}$ が イデアル $I$ に含まれることを示せ、 と言われたら、 $a,b,c,\dots$ がそれぞれ $I$ に含まれることを示せばよい。 ( $\langle a,b,c,\dots\rangle_{\text{ideal}}$ $a,b,c,\dots$ をそれぞれ含むようなイデアルのうち、最小なものだから。)

$I=J$ を示せ、と言われれば $I\subset J $ $I\supset J$ を 上の方法により示すことを考えれば大体うまく行く。

イデアルが等しくないことを示すための常套手段。 「これぞ代数幾何」という方法は

\begin{displaymath}I\subset J \implies V(I) \supset V(J)
\end{displaymath}

の対偶を使う方法である。 ただしこれがうまく行かないこともある。

一般にはグレブナ基底というものをつかうのがよい。 そこでは「割り算」と「S多項式」の議論がうまく使われる。



 

Yoshifumi Tsuchimoto
2001-05-24