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: 前小節の補遺 : その1:基本列ベクトル : を実ベクトル空間とみる。

体や環に新しく元を付け加えて環を作る。(上級者向け)

この小節の内容は線型代数から逸脱しているが、ついでだから付け加えておく。 代数の講義を受けてから振り返ってみるとよいだろう。

$ R$ と、その元 $ a_0,a_1,\dots,a_n$ が与えられているとき、 $ R$ に元 $ x$ を付け加えた環 $ S$ を作り、$ S$ のなかで $ x$

$\displaystyle f(X)=X^n+a_{n-1}X^{n-1}+a_{n-2}X^{n-2}+\dots +a_1 X+a_0
$

の根になるようにしたい、 つまり、

$\displaystyle f(x)=x^n+a_{n-1}x^{n-1}+a_{n-2}x^{n-2}+\dots +a_1 x+a_0=0$ (※)

が成り立つようにしたいということがたまにある。 (例えば、 $ {\mathbb{C}}$ $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ X^2+1$ の根を付け加えたものである。)

もしそのような $ S$仮にあったとすれば、

$\displaystyle S=
R +R x +R x^2+ R x^3+\dots +R x^{n-1}
$

であることがわかる。というのも、 $ x^n$ は関係式 (※)により $ x$$ n-1$ 次以下の 多項式で表現しなおすことができる

$\displaystyle x^n=-a_{n-1}x^{n-1}-a_{n-2}x^{n-2}-\dots -a_1 x-a_0
$

し、 $ x^{n+1}=x^n x$ も いったん $ x^n$ を (※) で $ x$$ n-1$ 次以下の多項式に置き換え、

$\displaystyle x^{n+1}=(-a_{n-1}x^{n-1}-a_{n-2}x^{n-2}-\dots -a_1 x-a_0)x
$

その後この式を展開して出て来た $ x^n$ をもう一度 (※)を使って $ n-1$ 次以下に 置き換えることができる。 $ x^{n+2},x^{n+3},\dots$ も同様であるからである。

となると、やはり

$\displaystyle R +R x +R x^2+ R x^3+\dots +R x^{n-1}
$

$ x$ 倍がどのように作用するかが問題になる。 前小節と全く同様な考察により、それは $ n\times n$-行列

$\displaystyle A=
\begin{pmatrix}
0& 0 & 0& 0& \dots&0 &0 &0 & -a_0 \\
1& 0 & 0...
...ots&0 &1 &0 & -a_{n-2} \\
0& 0 & 0 & 0& \dots&0 &0 &1 & -a_{n-1}
\end{pmatrix}$

という行列と対応することがわかる。

$ A$$ f(A)=0$ を満足することにも 注意しておこう。 このように、行列により、$ R$ 上の方程式 $ f(x)=0$ を満足する ような $ x$ を具体的に構成できるわけである。



平成15年1月30日